人生100年時代の個人M&A
1、要旨
長寿命化がさらに進んで行くと、65歳で退職してしまうとそこからの経済的余裕が無くなり、惨めな余生を送らなければならなくなりそうです。そこで、十分な経済的余裕を得る方法として、個人M&Aという方法もある。特に創業意欲のある人には検討の余地があります。「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」三戸政和著(講談社)に詳細が書かれていましたので、抜粋して以下に記します。
2、リタイア後40年生きる現実
「ライフ・シフト 100年時代の人生戦略」リンダ・グラットン教授とアンドリュー・スコット教授著では、2007年に先進国で生まれた子供の半数が104歳まで生き、日本で生まれた子供の半数が107歳まで生きるとされています。また、現在20歳の人は100歳以上、現在40歳の人は95歳以上、現在60歳の人は90歳以上生きる確率が半分以上あるというのです。「ライフ・シフト」で紹介されているデータは、これまでの人間の長寿命化の速度から予測される今後の長寿命化を計算に入れた「コーホート平均寿命」なのに対し、国が発表している平均寿命は今後の長寿命化を計算に入れていない「ピリオド平均寿命」です。
3、起業はやめておきなさい
起業とは事業をつくることです。世にないサービスや商品を浸透させていくビジネスを軌道に乗せるのは並大抵のことではない。会社というものは、設立した瞬間からお金がどんどん出ていきます。家賃・光熱費・交通費・健康保険などバカにならないことに気づきます。最も重いのが人件費です。手持ちの1000万円くらいは、あっと言う間に消えます。新たに起業する会社のうち、大きく成功するのはわずか0.3%です。
4、中小企業を個人で買収せよ
起業するより生き残った企業のM&Aをして経営を引き継ぐ、つまり事業承継がお薦めです。特に回収するあなたが大企業に所属していたなら、そこで学んだことが中小企業に活かせます。大企業が中小企業と何が違うかというと、業務の進め方やシステムなどの仕組みが洗練されているという点です。中小企業のシステム導入が遅れるのは、一つに初期費用がかかるため、二つ目にそもそもそのシステムの存在を知らないから。また、大企業には「仕組みの導入」に特化した担当者がいますが、中小企業にはいません。そのため、仕組みの導入は社長がやるしかありません。しかし社長自身がどんな新しい仕組みがあるのか知らないのです。こんな状態でも中小企業は回っているのです。びっくりするほど前近代的でまともな管理もされていないにもかかわらず仕事が回り、経営は黒字で安定している中小企業がたくさんあります。
中小企業を買うことの大きなメリットは、あなたが専門性を生かすことができ、勘所もわかる業界で、今経営が成り立っている会社を設備も、顧客も、従業員も、仕入先も、取引銀行も、そのまま引き継ぐことができる点です。資産形成の観点でも二つの大きな変化が生まれます。一つ目は「役員報酬」です。60歳からの10年間会社を経営して毎年1000万円の役員報酬をとれれば、手取りで7000万円くらいになります。収入の二つ目は「会社の売却代金」です。70歳まで経営改善を行い、利益率を上げることができれば、その上昇させた利益水準をもとに、買った時より高く会社を売却できます。改善した利益額の3~5倍高く売れるのが一般的です。
5、100万の中小企業が後継社長を探している
中小企業の約半数がなんらかの理由で黒字廃業しています。日本には中小企業が約380万社あります。その多くが後継者問題に直面しています。250万社(66.5%)が後継者不在です。そのうち6割の社長が「事業を何らかの形で他者に引き継ぎたい」と考えています。新たな社長を浴している会社は少なく見積もっても100万社くらいあります。
親族に跡継ぎがいない場合、次に従業員が事業承継者の候補に挙がりますが、従業員は単純な業務しか任されていないので、経営能力はないと言って良いでしょう。財務状態は悪くなく、当面の資金繰りにも問題がないのに、後継者や買い手がいないので廃業せざるを得ないという会社が多く存在する。事業承継の最良の選択肢、それがM&Aなのです。
6、中小企業の価格
一般的に中小企業のM&A価格は、バランスシート上の「資産」から「負債」を引いた「純資産」に営業利益の3~5年分を足した合計金額をベースにすることです。仮に純資産がゼロで、売上高1億円、営業利益が500万円の企業ならば、1500万円くらいで買えることになります。上記で営業利益が100万円の企業ならば300~500万円で会社が買えます。
10年間でも返済できないくらいの銀行から借り入れがあり、業績の良いAという事業と、業績の悪いBという事業を運営していたとします。欲しいのはA事業だけと言うときは、会社をそのまま買うのではなく、いったん自分で別会社を作り、業績の良いA事業だけを新会社に事業譲渡して借入金を切り離し、旧会社は業績の悪いB事業と借入金とともに廃業してもらう方法があります。
7、「大廃業時代」はサラリーマンのチャンス
社長としてのキャリアをスタートするタイミングは、中間管理職としてある程度の経験を積み、ビジネスマンとして脂の乗り切った40代後半から50代半ばぐらいまでが理想です。M&Aというと「大企業がするもの」というイメージでしたが、今や「大廃業時代」を迎えるにあたって「中小企業の事業承継としてのM&A」が知られるようになりました。M&Aが一般化した背景には、中小企業を専門にしたM&A仲介会社の存在があります。これらの会社は友好的買収をコーディネートする仲介事業を行っています。業界最大手は「日本M&Aセンター」です。ほかに「M&Aキャピタルパートナーズ」「ストライク」などの会社があります。また、最近始まったウェブサービスで、実際の「会社売買のマッチング」がネット上で行われる「TRANBI」というサイトもあります。
実際に会社を買ううえでベストなのは「自分が知っている会社の社長から買うこと」です。
現在の中小企業の経営者の多くが融資に対して個人保証をしています。しかし今なら、会社は「無担保無保証」で買えます。近年、国の要請のもと日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会によって「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、「法人と個人が明確に分離されている場合などに、経営者の個人保証を求めないこと」と示されました。
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