世界を旅して知ったお金の仕組み

1、要旨

 私はお金に対する人々の考え方は世界中の国々でそれぞれ違っているだろうと思っていた。それを教えてくれる著書に出会ったので、その内容を纏めてみた。

証券会社に勤めた著者(渡邊賢太郎)がリーマンショック(入社2年目)で多くの人が失業する様子をみて、お金のことをもっと知ろうと世界40ヶ国をバックパッキングで2年間旅して気付いたことを著書「世界を旅して知ったお金の仕組み」にしました。その内容を抜粋して以下に記します。

2、イギリス

 イングランド中央銀行の博物館に、「インフレーションとは何か」を学ぶアトラクションがある。それを子供達に操作させて、インフレのコントロールの難しさを教えている。

日本では一生涯お金について勉強した機会をもたない。お金の話をタブーとして扱ってきた。日本人は勤勉に働き、ボーナスを喜び、お金を強く求める一方で、お金を汚いモノとして避けてもいる。植えつけられた矛盾を捨て「お金のことを正しく学ぶべきだ」と認識を改めることからスタートする。なぜなら、お金は人間がより便利に、より幸せになるために生み出した、偉大なる発明なのだから。

私達はお金に困らない生活を与えられてきたからこそ、お金に無知になってしまったのです。現在の世界におけるお金の仕組みやルールに対して、疑問をもつこともありませんでした。資本主義の価値観とそのルールを西欧からそっくり輸入してしまった私達には、お金というものが、どこのだれかが自分達の都合の良いようにつくったもの、人間によってつくられたものだという感覚が欠落しているのです。

イギリスでは個人金融資産の7割が株式・年金保険で、預貯金は3割。日本は預貯金が6割を占めている。お金に関する教育レベルの差がここに現れている。

3、インド

 どの商店にも値札がないので、交渉でものを買うのが普通の国。

電気湯沸かし器を買おうとして、お店を回ると店ごとに値段がバラバラ。ある店では「これは30ルピー、こっちは50ルピーだよ」「安いほうは中国製で、高いほうはインド製」、「ありがとう。他も見てくるよ」というと、「ちょっと待て、中国製なら20でいいぞ」。「なるほど、やはり他を見てくるよ」というと「OK,じゃあ10で」。「インド製のこっちは?」と聞くと、「そっちも10でいいよ」という会話が普通に行われている。

日本人は「定価」に慣れて、価格交渉する力を失ってしまった。定価販売を世界で始めて行ったのも日本の三井高利(後の三越)だと言われています。

4、ベトナム

 ベトナムの風習で、旧暦の1日と15日に「冥金」と言って、冥土にいる祖先に必要なものを燃やして送るのがある。お椀にお札を入れて燃やしている。

これを見て、「お札は紙だ」。それが、なぜ1万円の価値を持っているのか。その理由を考えることになった。

5、エジプト

 紀元前4世紀頃には世界の金の9割を産出する豊かな国で、その金が現在に至るお金の歴史を形づくった。お金の発明により、モノとモノの交換がスムースになっただけではなく、人間はお金を発明して好きなことを仕事にする自由を手に入れたのです。例えば、本を書くのが好きな人がいるとします。本を書いているだけでは生活に必要な食糧を得られないので、どうしても食糧などの生活に必要なモノをつくる時間にあてなければなりません。しかし、お金という概念が生まれてからは、その本を読みたい人とお金を媒介として交換することができます。それで得たお金を使って、食糧と交換することが可能になりました。お金とは人間の「働く」という行為を多様で豊かにする偉大な発明だった。

6、トルコ

 トルコで世界最初の貨幣(コイン・エレクトラム鋳貨)が生まれました。金の交換が活発になってくると、分けやすく、増やせるものがほしくなり、鉱物を使用した「貨幣」が生まれた。金貨・銀貨・銅貨が生まれた。貨幣であれば1枚に使われる金の量が同じであるため、いちいち重さを量る必要がなく、とても便利になった。

7、イラン

 重たい貨幣を運ぶのがめんどうなので、この地で「小切手」が発明された。

ただの紙切れがお金の機能を果たしはじめた。そして、この紙でできた道具の利便性を知った権力者が、この手形の発行権を独占するようになった。

8、スウェーデン

 国家ではなく、銀行が発券した、初めての紙幣が発行された国。世界最古の中央銀行(スウェーデン国立銀行)が1668年に生まれた。そして、1688年に後の金融大国イギリスにイングランド銀行が設立された。イングランド銀行は民間銀行だが、政府から銀行券の独占的な発行券を与えられて、絶大な力をもつことになった。1816年覇権国家になっていたイギリスで初めて「金本位制」が採用された。簡単に言えば「ポンド紙幣を持ってきたら、いつでも金と交換するよ」とイギリス国家が保証していること。このように、金などの価値あるものと交換を約束されたお金のことを「兌換紙幣」と呼びます。そして、第1次世界大戦まで「ポンド」が世界の基軸通貨として流通します。その後、第1次世界大戦でヨーロッパに莫大な資金を貸し付け、武器を売って儲けた米国に世界中の「金」が集まりました。それ以降、USドルが世界の基軸通過として流通することになりました。

9、アメリカ

 世界最大の証券取引所(ニューヨーク証券取引所)がある国。上場企業数は約2400社、そのうち外国企業は460社。時価総額は約2200兆円(東京証券取引所は約600兆円)。

第2次世界大戦が終わった時点で金と交換を約束された通貨はUSドルだけになっていた。この時点で「USドルのみが金と交換可能で、それ以外の国のお金はUSドルと交換することで価値をもつもの」という共通認識が生まれた。

ベトナム戦争でドルを使い過ぎたため、他国に渡したドルが保有している金よりもずーと多くなってしまい、1971年ニクソン大統領が「ドルと金の交換をやめる」と宣言しました。この時から世界中のお金はただの「紙切れ」となりました。この紙切れになったお金を「不換紙幣」と呼びます。

10、中国

 この国の紙幣にはセロテープで貼り付けてあるものや、落書きされた紙幣が平気で流通している。現在、お札が価値あるものとして使用されるには、3つの信頼がなければならない。①発行体である政府への信頼 ②自分がこの札にその価値があることを信頼する。 ③他の人(受取る側)がその札の価値を信頼する。つまり、互いが信頼しあうことで価値が成立する。これが現在のお金の本質です。お金を稼ぐことも、お金を使うことも、本質的には「信頼の取引」となったのです。その仕組みが特に現れているのが、クレジットカードです。

アメリカではクレジットカードを保有することがその所有者の社会的信用度に直結している。(クレジット会社が所有者を評価している)

つまり、個人の信用度によって、その人の使えるお金の量が決まり、信用がなければお金を使うことすらできない。

11、バングラデシュ

 世界最貧国のひとつでありますが、この国は「心豊かな国」でありました。

大皿に大量の盛られた料理を皆が右手で直接自分の口に運んでいきます。日本で家族と鍋をつつく感覚に近く、家族の一体感が湧いてきます。家族や周囲の人々と強い絆で結ばれている。

 「お金持ち」とはどういう状態なのか。それはお金を使って「他者の時間」をつかうことができる。お金持ちはこの「他者を動かすパワー」を大量にもっていて、より多くの「他人の時間」を使うことができる。例えば、「一流デザイナーによる建築物に住む」という理想を実現できる。お金を支払うことで、デザイナー・大工・木材業者などの時間を使うことができる。

 「幸せとは、あなたが考えること、あなたが言うこと、あなたがすることの

調和がとれている状態」つまり、幸せとは自らが考える理想を実現した状態。

12、デンマーク

 毎朝9時半頃に仕事に出かけて、17時には帰宅して、帰ってきたら家族や友人と料理をつくってお酒を飲みながらワイワイやる。デンマークの有償労働は一日3.75時間。日本は6.3時間。

お金を「目的」と捉えるのか、「道具」として捉えるのかで幸せがどうかが決まる。お金を「道具」として捉えている人は、保有するお金の量にかかわらず幸せな人生を送っています。反対に、お金を「目的」として捉える人達は人間関係に問題を抱えていたり、どこか心の貧しさを負って生きています。

13、ウガンダ

 何の迷いもなく、外国人に寄付を求める国。長期に国家予算の半分を国際的な援助に頼ってきたウガンダでは寄付に依存する状態が出来上がった。

旅人との出会いも、ただの「お金をくれる人」と「援助を請う人」ういう浅はかな関係になってしまう。他者を「お金」を奪う対象として見てしまうと、結果として「信頼関係」を損ない、長期的にお金を遠ざけてしまう。

14、ブラジル

 バスのチケットを買うため、バス会社のチケット売場でチケットを購入したら、そこでは日常的にボッタクリをしている。淡々と流れ作業のようにお金を騙し取ろうとする人々がいる。たまたま出会った相手を、お金を手に入れるための手段としてしか見られないのは悲しい。

お金が欲しければ、まずお金を稼ぐことやお金を使うことを通じて、他者との信頼関係を築くこと。誰かと誰かの信頼関係があるところにお金は集まってきます。

「Crunch Base」というサイトでは、シリコンバレーを中心に、どの起業家がだれから、いつ、どのくらい投資を受けたか。などの情報が集積されています。これまで見えなかった個々人の関係にある「信頼関係」が情報技術の革新によって「可視化」することが可能になりました。

15、ボリビア

 銀山で栄えたこの国は、その大量の銀がヨーロッパに運ばれ「金余り」現象を起こすことになる。その金余り状態は「投資」「投機」といったものを生み出した。今でも、銀を掘っており、またその銀山を観光にしている。お金にシビアな人が多い国。

16、オランダ

 ボリビアの銀が生んだ最初のバブルはオランダで起きました。1634年から1637年にかけて、チューリップの球根が「投機」の対象になりました。

しかし、お金には「利子」というお金からお金を生み出す打ち出の小づちの仕組みがあります。この仕組みの誕生にはお金がなければ商売できないので、お金という便利な道具を一時的に手に入れるために対価を払ったのが「利子」になった。この利子を払う仕組みが一般化すると「重くて不便な金と金の預かり証を取替えになど来ないだろう。ならば、この預かり証を多めに発行して、期限を決めて貸し出そう。」こうして、本来1億円しか金を持っていない両替商が3億円の預かり証を発行するようになります。2億円分のこの世には実在しないお金が新たに創造されたのです。これが「信用創造」と呼ばれる仕組みです。

いつまでも持てるという、お金の不変性が持つパワーがお金を借りることに利子がつく根本的な理由。ポジティブなお金観を持たずに、たとえば「時給○○円」という仕事に何の疑問もなく時間を費やし、そこに学びや信頼関係を築くといった意識を持たずにいると、それは単に自らの生命(時間)をお金という便利な道具を手に入れるために交換していることになる。

ノーベル賞も1890年のノーベルが残した400億円の基金が仮に年10%で運用されると40億円が生まれるため、いつまでも無くならない。

現在、地球には72億人の人間がいます。ほんの数十年前までは世界中の富はアメリカ・ヨーロッパ・日本など10億人で分配されていましたが、そこにブラジル・中国・インド・ロシアなど30億人が加わりました。そのため、世界中で資源の奪い合いが始まっている。地球の中で奪い合いをしていたら、大地震や天変地異が起きた時に助け合うことができない。これからは奪い合いではなく、「共有」「共生」「共創」が大切になった。

17、ドイツ

 「カウチサーフィン」とは宿を探している旅人と、泊めてあげるよというホストをマッチングするサービスです。これに対する「金銭的な対価」がない。

このサービスのポイントは「ホストもゲストも互いを評価しあい、その結果が公開されている」。これが「信頼の可視化」です。自分がこれから行く国のことを知りたい、言語を学びたい、友人をつくりたい、子供達に世界を知ってもらいたい等の理由で無料で宿泊させてくれる人がいる。

世界中のひとりひとりが誰と繋がり、何を体験したかなど、公開されるようになりました。これは「信頼」の質と量が言語化され、可視化される環境が生まれた。それにより「信頼をお金で測る」「お金で信頼を買う」行為が必要なくなってきている。

これまでのマネー資本主義の崩壊の先に、人と人のつながりが資本となり、革新的な製品やサービスを生み出すエネルギーの源泉となる、新たな資本主義の世界「つながり資本主義」の世界が到来しつつある。

18、新しいお金の世界

 信頼の媒介物としての役割をインターネットがお金に代わりはじめたことによって生まれた「新しいお金の世界」。その新しいお金の世界で幸せに生きていくために、私達はお金にまつわる行動を新しくしていかなければならない。

重要なキーワードは以下の三つです。

(1)時間的・空間的な制限からの開放

 現実的にもインターネット上でも世界中のあらゆる場所に容易にアクセスすることが可能になり、変化の速度も劇的に増した。

「アイスバケツチャレンジ」という運動を覚えていると思いますが、筋萎縮性側策硬化症(ALS)の研究支援の寄付を訴える目的で、バケツに入った氷水をかぶるか、寄付をするか、あるいはそのどちらを選び、次の人を指名する仕組み。YouTubeなどの動画サイトで瞬く間に拡散しました。その結果、前年の寄付3.2万ドルだったものが、1330万ドルになった。このように、インターネットが信頼の媒介物としての役目を果たす新しいお金の世界では、世界の片隅で起こった変化が、乗数的に加速拡大します。これらの変化が時間的・空間的な制限からの開放です。

(2)つながりを自ら選ぶ時代

 時間的・空間的な制限から、私達は自由になりました。しかし、自由とは決して楽なことではありません。それは決断の連続を意味します。無数の選択肢の中で重要なことは「だれとつながるのか」という選択です。自らが大切にしたいものを同じく大切にする人、つまり「共感」できる人を見つけて、彼らとのつながりを選ぶことが必要になります。

(3)加速するシェアの文化

 「だれと共感し、つながる」かは「だれと、何を共有する」のかを決定づけます。つながる相手として、何を大切にしたいと考える人を選ぶのか。この選択が、つながりを自由に選べる時代において重要になっているのです。

マネーの世界では、私達は「所有すること」へのこだわりを手放していくことになります。なぜなら、世界中のあらゆる情報や場所、商品やサービスに、その気になればいつでもアクセスすることができるようになったいま、私達はもはやすべてを所有し、自らの名前を記すことにはそれほど意味がないと気付き始めているのです。むしろ、何かを所有することは、その管理や維持の手間を考えれば、足かせですらあります。結果、私達はより効果的に商品やサービスにアクセスし、使用することを望むようになりました。必要な時に必要な分だけ利用する。余ったら、必要とするだれかに渡す。そういう関係を築くことで、

管理の手間も分け合う、もしくは放棄することができる。「所有」よりも「共有」を重視する価値観が芽生えつつあるのです。シェアハウスやカーシェアといったサービスの登場が、そのような価値観の変化を表しています。

この「所有」から「共有」への価値観の変化とともに、信頼の媒介物であるお金を使う目的も大きく進化しています。私達はお金を介した交換で他者から手に入れた商品やサービスを自分一人で消費することに、それほど大きな喜びを見出せなくなっています。なぜなら、「消費」という行為そのものは、私達自身を真に豊かにすること、すなわち信頼関係を築くことにつながらないことに気付きはじめたのです。

私達がお金を通して求めるモノ自体が変化してきているのですから、当然私達はお金の稼ぎ方もそれに合わせて変えていかなければなりません。

「所有し、交換し、消費する」というこれまでのお金の世界の価値観は、もはや貧しさへと続く道となりつつあります。それに代わって、他者との「つながり」が資本となり、新たな仕事や豊かさをもたらす世界。「共感し、共有し、共創する」ことで、つながりを多様で豊かなものにし、結果としてお金も集まってくる世界。そして、この変化は私達の「働き方」へのパラダイムシフトも起こし始めているのです。会社に勤めて、自らの時間を売って、任された業務をこなす。このような「会社と個人」「資本家と労働者」といったお金を介した交換関係によって成立していた従来の働き方すら、もはや形骸化しつつあります。

自らつくり出すチカラを持ち、つながることを恐れない人々は、自らの知識や技能、リソースをだれと「共有」し、何を「創造」するかについて、自らの意思で選び始めています。そしてその時、つくり手達がそれまでに築いてきた信頼があれば、必要な資金すら多くの群集(クラウド)から調達することができる。

私達が働く目的は「幸せになるため」だと思います。そして、これまでは幸せになるためにはお金が必要だった。だからお金を稼ぐために働くことに慣れてしまいました。しかし、お金が信頼の媒介物であることを思い出し、さらにお金そのものも大きく進化しつつあるいま、私達にとって、幸せになるために必要なことは、単にお金をたくさん持つことではなくなりました。私達がそれぞれの求める幸せを得るためには、「他者との信頼関係」が不可欠です。

私達は、お金持ちを目指して、お金を稼ぐために働くのではなく、他者との繋がり(信頼関係)を築くために働き、自らを成長させ、結果として理想を実現するための力と、それに必要なお金を手に入れることができるようになる。そんな新しい世界を生きているのです。

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