長期投資家への薦め(1)

澤上篤人氏がすすめている長期投資家の考えには、私は全面的に賛成である。私自身も35年以上にわたって投資を続けてきたが、その投資方法は澤上篤人氏の長期投資法そのものだった。ぜひ、長期投資を理解して少しでも豊かな社会を築いていけることを念願しています。以下に澤上篤人氏の著者から引用した内容を記します。

1、 長期投資家とは

(1) 成熟社会になった日本では企業の株を買うことで経済の現場へお金を回してやれる。経済の現場にお金が回っていき、経済活動が活発化する。雇用機会も増えるし、給与水準も上がる。つまり、人々の生活がより豊かになるのをお手伝いすること。皆が豊かになれば、それだけ経済のパイは大きくなる。大きくなったパイの分け前が戻ってくる。

(2) 生活者と企業が将来の夢をいっしょに走る仲間として応援する。

生活者にとって企業の生産・供給活動(エネルギー・食料など)は一時たりとも無くなってはこまる。企業にとっても生活者の消費があるから従業員に給与が払える。「このお互い様の関係」を続けることができるように株を買って企業の経営を守ってあげる。企業といっしょにずっと生活していく。そこに住むのは自分や子供・孫達である。生活者と同じ目線で一緒に頑張っていこうとする企業のみを投資対象とする。その文化が企業経営に大きな影響を及ぼす。

(3) 株価暴落時に応援したい企業の株を断固として買う。毎日の生活で売上に貢献しているのだから、つぶれっこないし業績も長い目で見れば伸びていくから、株価もいつかは大きく戻る。少し戻っただけで利益になる。これが長期投資で得られるリターンである。本物の財産づくりというもの。暴落相場を断固として買う「真打応援団」になる。

(4) 株価が上昇してくると儲かりそうだと「にわか応援団」が群がって買ってくる。「にわか応援団」が増えるにつれ、株価の上昇ピッチが上がってくる。それを横目に、長期投資家は徐々に「応援はしばらく彼らにまかせようか」と少しずつ売り上がっていく。「にわか応援団」は上昇相場に乗ろうと血眼になって買い群がっているが、状況がちょっと変わって株価が下げに転じれば、たちまち総崩れとなる。そうなると、損はしたくないので売り急ぎが集中し、またもや暴落相場となる。そこで「仕方ないな。ここは俺たちの出番だ」と「真打応援団」が登場しなければならない。この繰り返しが長期投資のリズムだ。リズムの起点は、いつでも相場暴落時に買い向かうところから始まる。

以上のような考え方やお金の使い方ができる人を長期投資家と言う。

2、 長期投資家を薦める理由

(1) 今後しばらくは世界中が不景気(日本は不景気ではない)になり、それによって争いが絶えないことになると予想している。その状況を少しでも良くする役割が日本にある。日本がその役目を果たすために、企業を応援する必要がある。

(2) 大きなバブルの発生が無くなる。長期投資家が増えると市場参加者が増えるため、「市場原理」が働き、一方向に行き過ぎなくなる。市場では、買いたい人達で溢れかえっている時でも、「いつ大量の売りが出てくるか知れない」「そろそろ売り時かな」「売りが出る前に利益確定に入っておこうか」と自発的な動きが出てくる。これが、市場原理がもたらすブレーキ機能である。市場では誰も助けてはくれないから、自分で考え判断していくしかない。

(3) 日本の財政赤字が異常を越えている。デフレ経済が続いていたため、低金利で国債を発行し続けられたが、インフレに転じると国債の金利が約3%を超えた段階で利子の支払い不能に陥る。国債発行額は2015年3月で1143兆円(国民一人当たり818万円)の借金になる。「まだなんとかいける」と信じていることは空恐ろしいことである。金融機関等は腹いっぱいでこれ以上国債を買えないので、最近は日銀が100兆円も買っている。どこかで(そう遠くない未来)で国債の暴落とインフレの火が燃え上がることは間違いないだろう。その瞬間に国や政府はお手上げになり、国債を持っている金融機関はひどい目に遭うだろう。もちろん預金者や年金生活者・公務員・住宅ローンを組んでいる人も。

(4) お金に気を使うのを少なくして、自分の役割の実現に全力投球できる。

ある程度のお金がないと、お金を稼ぐことが全てのようになってしまい、自分が何をするために生まれてきたのかを忘れてしまう。

(5) グレートローテーションが静かに進行中。国債の利回りがこれ以上低下できない現在、もっと利回りの高い投資対象はないかと動き始まった。

それが、債券から株式への資金シフト、いわゆる「グレートローテーション」である。

3、 長期投資のテクニック

(1) 株式投資は企業の利益成長機会に参加すること。株式トレーデングとは違う。株価が暴落している時に買い向かえる人が投資家である。企業が突然の利益下方修正で株価が大きく値を崩しているとき、買いを入れるタイミングを考えることができるのが投資家である。

(2) 思う企業が5年後・10年後どんな業績になっているか、大まかにイメージする。取り組んでいる研究開発に対して、将来に大きな夢が感じられるか。その開発がものになったときに、その企業の業績はどれほど大きく跳ね上がるか想像する。

(3) 10年後にどんな社会や経済環境に住みたいのかを具体的にイメージする。

   いろいろ調べているうちに「この会社、自分の願う将来に向けて頑張ってくれている」と感じる会社の株がわれわれ長期投資家の応援銘柄である。企業が将来に向けてどんな先行投資をしているかを知る。

(4) 株価の「先行指標性」を押さえておくこと。株価は景気動向や企業収益に対し半年から1年程先行する習性がある。

(5) 手間暇かけて調べて好きになった銘柄でなければ、とても暴落相場では買えない。また、3年も5年も持っていられない。

(6) 景気の大きなうねりを先取りして、株式・現金(預金)・債券そして再び株式という順に投資対象を切替ていく。時間(約20年サイクル)の流れに沿った分散投資をする。

(7) 「よりよい社会を築いていく」が長期投資家のテーマ。安全で安心して生活できる社会づくりに資金を動員する。

4、 その他

(1) 日本の個人金融資産(2015年3月時点)1630兆円の内、預貯金は809兆円。現金保有が55兆円。日銀券発行残高は95兆円。日本の財政破綻が起きた場合、預貯金は引き出せない時期がある。最近でもキプロスで銀行が閉められたままだった。その引き出せない間にインフレが進んで財産を大きく目減りさせた経験が戦後の日本でもあった。

(2) 株式市場は経済の価格形成機能を持っているので、最も優先して回復させる必要がある。保有している株式はいつでも売れるわけで、預金封鎖のようなことは起こらない。株式は決済性の資金であり、どんな時でも換金できる有用性を誇る。世界貿易センターが倒壊した事件でも3日間の閉鎖で最も早く市場が開いたのがNY証券取引所だった。

(3) 世界の株式市場は長期でならしてみると、過去100年以上の平均で10%ちょっとの上昇を見せている。その間の世界経済は4%の成長をとげている。

(4) 我々は生きながらえている限り、日々の生活が営まれていく。その日々の生活で企業のお世話になる。企業も人々の生活がある限りそれを支える企業活動も無くならない。

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