邱永漢の「株の原則」

1、要旨

 邱永漢氏(故人)は成長株という理論を証券界に持ち込み、「株の神様」にまで持ち上げられました。本人は株のプロではありませんが、基本的で解りやすい株の説明をした本を発行されています。その中から、「株の原則」に書かれている内容を抜粋してみました。

2、株の原則

(1)推理を楽しむこと

 一見すると、証券会社が株価を動かしているように見えるが、実際には株が証券会社を動かしている。ちょうど動物園の「お猿電車」のようなもので、猿が先頭の機関車の上に乗り、いかにも自分で動かしているように見える。しかし、実際のところ猿は動いている電車に乗っているだけなのです。証券会社だけでなく、すべての会社・機関や人が株の動きという目に見えない大きな力の上に乗っているだけ。

 自分自身の肌で感じたことや自分の目や耳で確かめたことから、じっと感覚と頭を澄ませて推理するプロセスは儲ける儲けない以前に、知的ゲームとして楽しいことです。それが当たって、現実の儲けをもたらしてくれれば、それは大変なおまけと言っていいでしょう。経済通といわれる人たちや、いわゆる専門家の言葉に惑わされず、自分の体験を信じることが大切です。

(2)自分を抑える、克己心を忘れるな

 株は自分に合った買い方をする以外に方法はありません。ただ、人気が過熱状態にあるときに、株を買うのはダメです。人間の心理は、加熱しているときには、かならずもっと上に行くんじゃないかと思うのです。つい、追いかけたくなる。だからこそ株式投資には克己心が必要です。株式投資は金儲けではあるけれども、精神修養でもあるのです。金儲けを実現するためには、相当自分の心をコントロールできないといけない。のぼせあがったら、収集がつかなくなります。いちばん気をつけなければいけないのは、「ムリなお金」で株を買わないことです。例えば、家を買って3ヶ月後に払う金を用意してある。でも株価がすごく動いているようだから3ヶ月の間に2割程度儲けてやろうと欲を出して買う。すると儲けるどころか、株価が下がって家に払う金がなくなっちゃう。どうしてもお金が要るから、株を売らなければいけないということで損をしてしまう。

(3)自分の性格に挑戦するつもりで株をやれ

 誰でも株が下がると、もっと下までいくのではないかと心配になって、どうしても売りたくなる。逆に、上がると今度はもっと上がると思ってがんばってしまう。だから私は

株は辛抱料というか我慢料だなあと思っている。

(4)時代の変化に気を配れ

 こういう会社が伸びるという判断基準を決めるのはとても難しい。常に時代の変化に気を配っているしかしょうがない。あまり業界にとらわれず、あくまで会社単位で考える。

毎日、上がり下がりを気にしているようでは儲からない。毎日の波の高低よりも、潮の流れがどうなっているかを見るほうが正しい。毎年、自分の持っている株が時代に合っているかどうか見直す必要がある。

(5)銘柄は自分の身近なところから選べ

 ふだん自分が使っているものに注目してみるのもひとつの方法です。純粋に世の中の動きに注目する。あるいは新聞の記事から想像する。つまり自分の身近なところから株に対する興味を持つこと。そこから自分で調べてみると、自然に頭の中に残るような会社が出てくるものです。その会社の株を買ってみるのがいいんじゃないかと思います。

(6)株式投資の定石だけにとらわれるな

 囲碁に定石があるように、株の買い方にも常識としてこんなやり方がありますよと教えることはできるのです。一流会社の株を買っておけば安全だというのは、まさに世間の常識であり、定石といっていいでしょう。でも、囲碁は定石だけおぼえたって、おもしろくないし、また勝てません。勝つ方法は自分で考えるしかない。

業界トップの株を買うのは、お相撲で言えば横綱をひいきにするのと同じです。横綱は一番強いに決まっているけれど、負けグセがつき始めるとやたら負けることもある。この次に横綱になりそうな力士を探して、そういう株を買うのが良い方法だと思う。

株価があがるのは、業績が良くなったときばかりじゃない。経営者が代ったり、売りと買いのバランス、政治的不安など、いろいろなことが株価に影響を与える。不測の要因が非常に多い。

(7)自分で高すぎると思った株は買うな

 株は自分のペースでやるべきであって、世間のペース(仕手株)に乗ると非常に危険です。特に証券会社に薦められる株に仕手株が多いので、うっかりそれを買うと大損をさせられます。証券会社に苦情を言うと、人事異動で担当者が変わってうやむやにして終わりになります。

(8)株の衝動買いはするな

 株はチビリチビリ買い、チビリチビリ売るのがコツ。株式用語では「ナンピン」と呼んでいる。ナンピンとは平均化するという意味。これは株式をやる人の常識ですが、証券会社の人は教えてくれません。

(9)金儲けのチャンスを自分のものだけと思うな

 「知ったがおしまい」で自分の耳に入るぐらいだから、他の人は皆知っていて相場はおしまいなんだと考える。お金儲けというのはチャンスがあったら、自分のものだと思うのは間違いです。自分に似合った金儲けがあると考えることです。

(10)素人考えを重視せよ

 経験を積んだからといっても、その経験はあくまで過去のものであり、未来の経験ではない。未来を予想する株式ゲームでは経験が役にたたない。むしろ邪魔になる場合が多い。素人の考えを重視すること。

(11)株のことは株に聞け

 儲かっていないのに株価の高い会社もあれば、儲かっているのに株価の安い会社もあります。そのへんは理屈に合わないものです。だから「株のことは株に聞け」ということわざがあるのです。

(12)他人に責任を転嫁するな

 「証券会社のセールスマンのいうことは聞くな」とは、毎日、証券界の人は相場を見ていても株のことがわかるわけではない。証券界の人は波打ち際に立って海を見ている人だ。今日は波が高いとか低いとかしか見えない。一番大切なのは、潮の流れる方向を見ることです。株式投資というのは本来、冒険的要素の強いものですから、他人に責任転換できない立場に自分を置くことが必要なのです。

(13)新聞の株式欄をみるときは全体を眺めよ

 つぎに上がりそうな株を予想するのに、もっとも大切なのは株式市場全体の動きをどう見るかということです。株式市場全体に影響を与える要素には、まず何といっても景気・不景気の流れがどうなっているかということです。景気と不景気の関係は陰と陽の関係と同じで、陰の極は陽、陽の極は陰というような相関関係にあります。わかりやすくいえば、「夜が明ければ朝がくる」といったようなものです。

おもしろいのは、実際の景気の回復よりも株価の方が先に変化することです。それはだいたい6ヶ月くらい早い。実際の景気はまだ良くなっていないのに、株価だけが突如として上がり始めます。こんな具合に突然上がった株がつぎの相場をリードする有望銘柄になります。

(14)情報はそのままウノミにするな

 情報というものは、そのままウノミにするのは大変危険です。情報提供者がどの程度の知識の持ち主か疑問だからです。その意味では、新聞に記載されている記事のうち、正確度が高いものはいくらもありません。ナマの情報を実際に役立たせるためには、高度な判断に基づいた加工作業が必要です。

(15)情報を読む自分なりの見方を持て

 株の全体の流れを捉えていくには、それについての情報をできるだけ集めることが大切です。しかし、どんなに沢山の情報を集めたところで、その情報をどうみるかという自分の見方を持っていなくては、情報は1本の糸で繋がりません。だから株全体の流れの中に

どんな傾向があるかということを、自分の問題意識として持っていなければなりません。

(16)常識外のできごとを軽視するな

 人間はデーターだけでものごとを判断することはできません。それにひらめきとか、カンというものがプラスされるのですが、そういうものは豊富な経験の中から身についてきます。自分の思っていることと反対のことや、常識から考えると信じられないことが起こった場合は、それが世の中の新しい傾向かもしれないのです。


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