日本再興戦略

1、要旨

 米国が内向きになってきた状況で、日本は米国から少しずつ距離をおいた戦略に基づいて行動していく時代が来ています。「日本再興戦略」落合陽一著(幻冬舎)に新しい発想で日本の再興戦略を描かれていますので、以下に抜粋して記します。

2、日本型イノベーション

 高度経済成長の正体とは、「均一な教育」「住宅ローン」「マスメディアによる消費者購買行動」だと考えている。つまり、国民に均一な教育を与えた上で、住宅ローンにより家計のお金の自由を奪い、マスメディアによる世論操作を行い、新しい需要を喚起していく戦略です。高度経済成長時代には良い戦略でした。しかし、現在の状況でこの戦略を続けていくと、日本人一人当たりの生産性はどんどん下がっていきます。機械親和性が低く、代替性の高い人類を生産する仕組みだからです。機能しなくなったシステムを見直して、新たな価値が生まれるシステムをつくり直さないといけない。

 今の日本は東洋化した方が、イノベーションがより起きやすくなるはずです。日本人は個人として異端にはなりにくいですが、集団として異端になるのは得意です。今後、日本人に必要なのは戦後につくられた精神構造を変形させ、またシステムや要素のテクノロジーの更新を同時に行っていくことです。今の日本は工業的な生産様式をITやイノベーションに向いた生産形式へと変えるべき時を迎えています。製造が得意な大きな会社がひとつあって、その上に何個もソフトウェアやプラットフォームに特化した小さい企業が乗っている感じです。

3、テクノロジーは世界をどう変えるか

 日本の再興戦略を考える上でカギになるのはテクノロジーです。AI・ロボット・自動運転・AR・VR・ブロックチェーンなどのテクノロジーが確実に我々の生活や仕事を変えていきます。最近はコンビニに行かないで、アマゾンの「Prime Now」で宅配してもらうことができます。今後届けてくれるのがロボットになればコストが下がります。食事についても「UberEATS」というサービスを使えば、自宅まで好きな料理をすぐに届けてくれます。将来的にロボットが届けてくれれば人の負担もかかりません。

 タクシーが自動運転になったら、手紙がEメールになった時のように、ものすごく頻繁に自動運転タクシーを使うようになるはずです。手紙をやりとりしていた回数よりはるかに頻繁にEメールでメッセージを送信するようになりました。昔のカメラの撮影回数に比べて、デジタルカメラによってその頻度はずっと多くなりました。

 5G(第5世代移動通信システム)になると、通信環境が劇的に変わります。現在の4Gに比べて通信速度は100倍、容量は1000倍になります。日本は世界に先駆けて2020年から東京でスタートする予定です。情報通信の遅延が感じられなくなります。

4、人口減少・高齢化がチャンス

(1)自由化・省人化に対する反対運動が起きない。

  人が減っていくので、仕事を機械化してもネガティブな圧力がかかりにくい。

(2)輸出戦略

  日本が人口減少・少子高齢化へのソリューションを生み出すことができれば、それは「最強の輸出戦略」になります。

(3)教育投資

 子供の数が少なくなると、「子供は少なくて貴重だから大切にしよう」という気運が高まると、社会全体として子供に対して教育コストをかけることが社会善になります。

5、ブロックチェーンとトークンエコノミー

 これからの日本はすべてをブロックチェーンにして、あらゆるものはトークンエコノミーであるという考えが必要です。ブロックチェーンは分散型の台帳技術と言われますが、あらゆるデータの移動履歴を信頼性のある形で保存し続けるためのテクノロジーです。しかも、誰かが一元的に管理するのではなく、全員のデータに全員の信頼をつけて保っていくことができます。非中央集権的なテクノロジーなのです。その典型がビットコインに代表される仮想通貨です。仮想通貨により生まれる経済圏がトークンエコノミーです。トークンとは仮想通貨とほぼ同義語と考えてもらってかまいません。トークンエコノミーというと難しく聞こえるかもしれませんが、すでに日本にはトークンがたくさんあります。TSUTAYAのTポイントカードやANAのマイレージもトークンです。日本はすでにトークンエコノミーの先進国なのです。トークンエコノミーとは、このポイントカード経済圏がさらに広がって、企業だけでなく個人もポイント発行できるようになるイメージです。

 このブロックチェーンやトークンエコノミーをうまく生かすことで、日本は国の形、社会の形、仕事の形、個人の形を世界に先んじてアップデートすることができます。現在、スマートフォンでアプリに1500円支払っても、その3割は自動的にアップルやグーグルに抜かれます。こうした状況に終止符を打てるのも、ブロックチェーン化でありトークンエコノミー化なのです。

6、機械化自衛軍

 これからの日本の国政を考える上で、重要性が高いのは国防です。なぜなら、地方分権が進み日本が多様化していくと、中央政府の求心力が弱くなって、国防が弱くなりかねないからです。自衛軍強化の柱になるのは自動化です。ロボットに自衛してもらえばいいのです。

7、民主主義のアップデート

 内政として取り組むべきは、民主主義の更新と進化です。民主主義とは最大公約数的な決定装置ですので、人口が増えすぎて多様な利害や意見を持つ人が増えてくると成立しなくなってきます。標準から外れたダイバーシティの高い人には民主主義が適用されないのです。

今のマスが大きすぎるので、小さく区切っていかないといけません。そのためにも地方自治になっていくのは必然です。日本には八百万の神がいて、ひとつひとつのことを個別に解決していくというのが東洋的な考え方です。明治時代に国土を発展させるために、西洋型の統治スタイルにしたわけですが、もう一度以前の自律分散型に戻るべきときなのです。それに加えて、「平等」という西洋的な概念から脱して、もっと日本的で自然な形、フラットな形にシフトしていった方がいい。

8、新しい日本で必要な能力

 これからの日本をアップテートしていくのに必要な能力はポートフォリオマネジメントと金融的投資能力です。

 これからの時代は複数の職業を持ったうえで、どの職業をコストセンター(コストがかさむ部門)とするか、どの職業をプロフィットセンター(利益を多く生む部門)とするかをマネジメントしないといけなくなります。

 トップ研究者になるためには時代感覚をつかむことが大事ですが、この能力は投資能力と近い。金融的投資能力とは「何に張るべきか」を予測する能力です。

 ポートフォリオマネジメントと金融的投資能力を磨くには教育が大切です。

 小学校に入るまでの幼児期は五感や共感性、社会性をフルに使った方が良い。

 小学校で大切なのは、好きなものや好きなアクティビティを見つけることです。

 中学校では数理的素養を身に付けることが大切です。高校でポートフォリオと投資能力を身に付けるのが良いと思います。

大学生には研究が一番です。研究には必ず新規性が求められ、研究をするとその人しか知らないことを知ることができるからです。

9、「ワークアズライフ」の時代

 今まではワークとライフを対比で捉えて、ワークの時間とライフの時間を区切っていました。しかし、これからはワークとライフが無差別となり、「ワークアズライフ」となります。生きていることによって価値を稼ぎ、そして価値を高める時代になるのです。

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