大事なお金の話

1、要旨

 「知っておきたいホントに大事なお金の話」(佐伯良隆著)の内容を抜粋して以下に記します。そろそろ日本も高等学校教育でお金について勉強するタイミングに来ていると思います。

2、お金のパワー

(1)魅力

 大金があれば欲しいものの多くが手に入ります。大きな家に住め、高級外車に乗れ、物質的に豊かな暮らしができます。高級レストランや海外旅行にも好きなだけ行けるでしょう。また、お金は「腐らない」「持ち運びやすい」という性質もあります。「労働」など、目に見えない価値も保存します。しかも、必要なときに欲しいものと交換できるのです。

(2)魔力

 お金は食欲・物欲のみならず権力欲をも満たしてくれます。お金をたくさん持っていれば、自分は力のある強い人間だと思うかもしれませんし、他人に優越感を抱くかもしれません。お金は「力」だと感じさせます。

(3)暴力

 お金で人々を操ったり、傷つけたりもできる。極端な例は賄賂ですが、私達は大なり小なり、日々お金の力にコントロールされているのです。

3、お金と時間の関係

(1)友人から「100万円貸してくれない? 1年後に105万円にして返すから」と言われたらどうしますか。

 友人にお金を貸すことで、あなたは銀行から利息を得るチャンス(機会)を失うのです。このように利益を得る機会を失うことを「機会費用」といいます。もうひとつ「本当にお金を返してくれるかどうか」です。これを「不確実性」といいます。友人が約束を破ったり、病気や事故で約束を守れなくなったりするかもしれません

105万円(1年後の受取額) ÷ 1.11(機会費用+不確実性) = 94.6万円(現在価値)

割引率 = 機会費用 + 不確実性 

現在価値 = 将来のお金の価値 ÷ (1+割引率)

(2)ふつうと違う「お金のレンタル料」

 「金利」はいつでも引き出して使えるという自由を失う対価として支払われます。お金を必要なタイミングで必要な額だけ引き出したり、換金したりできないことを専門用語で「流動性リスク」と呼びます。自由を放棄して、銀行にお金を預けることの見返りが金利で、自由を失う時間が長いほど金利は高くなるのです。

4、お金の殖やし方

(1)たったひとつの厳しい掟

 「リターンを得るには、リスクを取らなければならない」という、お金の世界には「リスクとリターンの法則」が働いている。リスクとは「(儲けの)ブレ幅」のこと。ブレ幅が大きければ「ハイリスク」、小さければ「ローリスク」になります。そして、このブレ幅こそが儲けの可能性を表すのです。ですので、リスクは避けるべきものではなく、管理しながら上手につきあうものなのです。

(2)リターンの正しい意味

 あなたの100万円が①半々の確立で、180万円か60万円になる。 ②半々の確立で、120万円か90万円になる。この場合あなたはどちらを選択しますか。

選択肢①の期待収益率 80万円×50%=40万円 -40万円×50%=-20万円

リターン40万円-20万円=20万円  期待収益率 20万円÷100万円=20%

選択肢②の期待収益率 20万円×50%=10万円 -10万円×50%=-5万円

リターン10万円-5万円=5万円  期待収益率 5万円÷100万円=5%

選択肢①は「ハイリスクハイリターン」、選択肢②は「ローリスクローリターン」であり、両方ともリスクとリターンが見合っている。どちらを選ぶかは、あなたの気持ちしだいです。人はそれぞれ性格が違います。リスクに対する感度は、心理的な要素が影響する。

(3)銀行預金

 ローリスクローリターンの代名詞。日本人は金融資産の55%を銀行預金しています。これは預金以外のリスク資産(運用法)についての正しい知識が乏しいため、漠然とした不安感が先行し、積極的に動けないとも言えます。

(4)株式

 株式は会社をつくる際のもととなるお金で資本金を集めるために発行するもので、「株式会社」にとっては不可欠な仕組みです。

株式で利益を出す方法は二つあります。ひとつは、安く買った株を高く売る。これをキャピタルゲインといいます。もうひとつは、年に1~2回受けられる「配当」です。これは会社の儲けの一部を株主に分配するもので、業績が伸びていれば増えますが、悪ければ減ったり、支払われなくなったりします。

株価は短期的に見れば激しく上下しますが、中長期的には会社の業績や成長性を反映します。好業績で成長している会社の株価は、数年後には上昇している可能性が高い。株に投資するというのは、その会社のオーナーになることなので、会社の成長を応援するということです。ですから株は中長期的に保有してその企業の成長の果実を得るものです。

(5)債券

 債券とは「私はあなたに○○円借りました。期日が来たら○円の利息をつけて返します。とお約束します」という内容が書かれた借用証です。

国が発行する債券を国債、会社が発行する債券を社債と呼びます。国債の金利は固定金利型で、期間が長いほど高いのがふつうです。国債にとっての最大リスクは金利が上がることで、国債価格が下落します。社債は発行する会社の信用をもとに発行されますので、危ない会社ほど金利が高いのです。

(6)投資信託

 株式であればどの銘柄を買うべきかわからない人や情報収集に時間をかけたくない人もいます。そういう人向けに「投資のプロを信じて託してしまおう」というのが投資信託です。投資信託は証券会社や銀行の窓口で買えます。株型投信、債券型投信のように多くの銘柄を組み入れたものが一般的ですが、株+債券のような組み合わせたものも多くあります。

投資信託のデメリットは手数料です。代表的なのが「販売手数料」「売却委託手数料」「信託報酬」です。運用で利益がでなければ損してしまいます。最近の運用利回り平均で1.2%程度です。

(7)お金の殖え方を加速させる魔法

 今、金利5%の10年定期預金があるとします。ここに100万円を預けることにしました。この預金には ①毎年金利5%分を現金で受け取れるタイプ

②毎年の金利5%分を元本に組み入れて継続されるタイプ があります。

②の場合(複利計算)は10年後に150万円になり、①の場合(単利計算)は162.8万円になります。30年後には複利計算した方は432万円になり、単利計算した方は250万円となり大きな差となります。

ちなみに、複利でお金が増える速度をおおまかに知る方法があります。「72の法則」と言い、お金が2倍になる年数を知るのに便利で「72÷利回り」で計算できます。例えば、利回りが2%なら72÷2=36年となります。

5、お金の守り方

 (1)リスクを手なずけ、上手につきあう方法

 金融の世界では「リスク=収益の変動性=リターンの源泉」が原則です。

リスクがあるからこそ、儲かるチャンスがあるのであって、リスクゼロで儲かるなんてことはありません。大事なのは、リスクを避けるのではなく、管理する術を知ることです。

(2)資産の分散

資産運用の世界にはとても有名な格言があります。「ひとつのかごに卵をもるな」ひとつのかごにすべての卵を入れておくと、それが倒れたとき全部の卵が割れてしまいます。そこで、卵をいくつかのかごに分けて保管すれば、万一のことがあっても全てがダメにならずにすむという考えです。

株式を買う時も、できるだけ互いに関連の小さい銘柄を組み合わせることで、リスクを分散するのです。なぜなら経済では、ある出来事が特定の企業や業界にマイナスでも、別の企業や業界にはプラスであることがよくあるからです。

このように、異なる業界の株式の集まりを「ポートフォリオ」といいます。お金を守るとはポートフォリオを上手に組んで資産を分散し、リスクをコントロールすることです。

(3)資産場所の分散

 保有資産が国内に偏るということは、日本そのものに何かあったときに被害が大きくなります。資産が一国に偏ることをカントリーリスクと呼びます。

外貨預金や投資信託を通じてお金を海外に動かせます。分散効果が得られるだけでなく、その国の社会や経済に関心を持つきっかけになるかもしれません。

(4)資産を購入する時間を分散

 株や債券の価格、為替などは完全には予測できません。大事な資産を守りながら殖やすには、時間を味方につけて変動リスクを下げることこそ大事。それがリスク管理です。株価にしろ、世の中に変わらないものはありません。あらゆるものが時間とともに変化します。ほったらかしのポートフォリオは時間とともにバランスを欠き、リスクを抱えるハメに繋がります。そこで行いたいのが「リバランス」です。リバランスとはポートフォリオにおける資産のバランスを元に戻すこと。

6、お金の稼ぎ方

(1)稼ぐことのリスク・リターン

 オイシイ儲け話がないように、世の中にオイシイ仕事、オイシイ稼ぎ話など基本的にありません。もし、大きく稼ぎたいのなら、それなりのリスクを取らなければならないのです。

サラリーマンの生涯賃金は2億円程度といわれています。それだけでは金持ちになることはできません。

7、お金の使い方

(1)家を買う

 「低金利の今はマイホームを買うチャンス」「家賃並みの返済額で、夢のマイホームが手に入る」こんな言葉に誘われて、多くのひとが住宅を購入します。

家を買うというのは、数千万円もの大きなお金を、住宅という資産に固定することを意味します。この瞬間、お金を自由に動かせないリスク、つまり「流動性リスク」が発生します。そのため、急に大金が必要になったら困ることになります。一般的に新築住宅は住み始めた瞬間から中古になり、大きく値を下げます。そしてその後も穏やかに下落していきます。ローンの返済が5年分進んでも、資産価値の減りの速度に追いつけません。つまり、負債額が資産価値を上回る。これは資産をすべて売っても、借金が残ることを意味します。

さらに、住宅購入に伴うリスクがあります。

ひとつは「金利の上昇」です。「固定金利タイプ」と「変動金利タイプ」を選択できますが、現在のような低金利は歴史的にも異常な状態です。決して長くは続かず、金利が上がってくる可能性は高いのです。金利が1%上昇するだけでも、毎年数十万円の金利が増えます。将来の返済リスクを下げるためにも、「固定金利タイプ」を薦めます。

二つ目が、「収入の減少」です。勤めている会社の倒産や転職、あるいは病気などで収入が減り、ローンの返済が厳しくなる場合もあります。

三つ目が「家が被害を受けるケース」です。地震などの災害に遭ったりすれば、住宅に修繕が必要になります。

(2)保険

 私達のほとんどは保険に入るのが当たり前と思っています。家計が保有する金融資産のうち、28%が保険と年金準備金で占められている。1世帯当たり平均で4件の保険に加入しており、年間保険料支払額は45万円となっている。1世帯の平均年収は548万円だから、収入に占める保険料は8%になります。保険料は通常30年以上支払いますから、1500万円近くになります。

 保険は「万が一のリスク」に備えて購入する金融商品です。保険を選ぶ際に大事なのは、シンプルに考えることです。

医療保険に加入している人が最も多く、「二人に一人は癌にかかり、3人に1人は癌で死亡する」と保険会社は言います。実際は39歳までの男性で癌で死亡している人は0.2%です。癌にかかる方の殆どは高齢者で、長生きの代償とも言えるのです。平均入院日数は35日で、入院費用の自己負担額は平均20万円です。健康に気をつけている人は保険料が損になります。健康が得をする貯金と、健康が損をする保険、なんだか不思議です。私達が全員加入している公的な健康保険に「高額療養費制度」があり、1ヶ月の個人負担は約10万円で済みます。

死亡保険は自分に万が一のことが起きたとき、残された家族の生活を保障するために応えたものです。日本に住む誰もが入っている国民年金では、残された家族のための「遺族基礎年金」があります。妻と子二人なら、年間で124万円が支給されます。厚生年金に加入していれば支給額がさらに増えます。これで足りない分をカバーするのが、民間の死亡保険です。死亡率は35歳男性で1000人中0.85人で、40歳で1.28人となっています。保険の一部が戻ってくる「積み立て」「貯蓄型」というタイプがありますが、これは掛け捨て型の保険に「積み立て部分を組み込んだ」商品なのです。リスクに備えることとお金を貯めることを、同じ商品で行う必要はありません。「払ったお金は戻ってくる」と聞こえはいいですが、その内情は複雑化した商品です。保険の基本は掛け捨てです。

サウンドスクエア 株式会社

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