行動経済学

1、要旨

 大江英樹著「投資賢者の心理学」で書かれている内容を以下に記します。現在、日本政府が一般庶民を株式投資に向かわせようとあらゆる手段をとり始めています。いずれ多くの日本投資家が現れるのは確実です。その時に、この投資家心理が見直されると思います。

2、資産運用の勘違い

(1)金融機関はプロだと思う勘違い

   銀行や証券会社の窓口や、営業で回ってくる人は運用のプロではありません。銀行や証券会社の中には「運用のプロ」がいますが、自社の資産を運用しているだけです。個人顧客の相談を受けたり、アドバイスしたりするのは窓口担当者や営業職員です。彼らは「販売のプロ」であって「運用のプロ」ではありません。あくまで、自社の商品を顧客に買ってもらうセールスです。それでも、金融機関の窓口を訪れて相談にくる人がいるので、金融機関も「資産の総合アドバイザー」とか「トータルライフプランナー」といった名称を付けた人員を窓口に配置しています。これは行動経済学で言う「権威付け効果」です。金融機関の多くが社員にFP(ファイナンシャルプランナー)資格を取得させていますが、これはあくまでもマーケティング戦略です。彼等は販売のプロであっても、運用のプロではありません。彼等は悪意を持って顧客をだましてやろうとか、売れ残りを押し付けてやろうなどという考えは決して持っていません。良い商品だと信じているもの、そう教えられたものをお客さんに買っていただき、喜んでもらおうと真剣に考えています。

(2)サラリーマンはお金持ちになれないという勘違い

   日本ではサラリーマンが5500万人います。働いている人の7割を占めています。

多くのサラリーマンが「決まった給料しかもらえないのだからお金持ちになれるわけがない」と思っています。どうしてこう思ってしまうのかは、二つの心理的な罠があります。ひとつは「現在バイアス」といって、いやなことや面倒なことを先延ばしにしたいという心理です。もうひとつが「双曲割引」といわれる心理です。遠い将来に得られる利益の価値を大きく割り引いてしまう。これによって人は普通、老後のための資金を貯めるよりも遊びや買い物に使ってしまいがちになる。対策として、給与天引きを利用して、簡単に預金をおろせないようにする方法が良いのです。

(3)定期預金ではインフレに対応できないという勘違い

   タイムラグがありますが物価の上昇が起きれば預金金利が上がります。したがって預金が物価上昇やインフレに対応できないということではありません。インフレに対応できないのは現金です。もちろん定期預金で資産運用は安心ということではありません。

(4)「持たざるリスク」という勘違い

   株式市場がにぎわってくると「持たざるリスク」が言われるようになります。株が上がってきているのに、持っていなければ儲け損なってしまうということを意味しています。

   「みんなが買うから自分も買わなければ」というあせりの気持ちがおきます。心理学で「ハーディング現象」と言われるもので、行列の出来ているお店を見るとつい並んでしまいたくなる気持ちと似ています。

(5)長期投資=低リスクの勘違い

   「リスクとはブレ幅」のことです。長期に投資していると、大きく損をしたり大きく儲けたりしますので、リスクが大きくなります。ただし、長い期間を取ることで平均値は収れんしていきます。

(6)リスク・リターンの勘違い

   「ハイリスク・ハイリターン」という言葉が使われていますが、正しくありません。ハイリスクでもローリターンがあります。正しくは「高いリターンを求めると必ずリスクは高くなる」また「低いリスクのものは低いリターンしかもたらさない」です。

(7)投資の利益は不労所得という勘違い

   投資に対する最も根強い偏見は「投資して儲けた利益は不労所得だ」という見方です。株の売買でもうけるのは、社長が経営判断して利益を最大にしようとしているのと同様に労働です。投資は「脳に汗して働くこと」です。投資家はあらゆるデータを調べ、リスクを考えながら自分の投資のリターンが最大になるように行動します。

3、投資の基本で、ありがちな間違い

(1)老後が心配だからそろそろFXでも

   投資の初心者で、意外とFXから始めている人が多い。FXはレバレッジを掛けて行う投機で、儲けるのが難しいものです。どうして、FXを初心者が始めるのか、これは「利用可能性ヒューリスティック」です。利用可能性ヒューリスティックというのは頭に思い浮かびやすい、目立ちやすい特徴や手がかりだけで判断しがちな心理を言います。

(2)ドル=コスト平均法を疑え

   これは毎月一定の金額で同じ投資対象に投資をし続けるやり方です。

  ドル=コスト平均法自体は有利でもなければ不利でもありません。下落相場の時には一括で買うよりも高いリターンになりますが、上昇相場の時は逆に一括投資の方が高いリターンが得られます。

  ドル=コスト平均法の最大メリットは、購入をルール化してしまうことで上がり下がりに対して気をもんだりする必要がないことです。

(3)株より債権の方が安全?

   株価は企業の業績に最も影響を受けますが、さらに世の中の景気や金利などさまざまな変動要因があります。債権は最大の価格変動要因は金利です。金利が上がればほとんど全ての債権が値下がりします。

4、投資信託は知らないことがいっぱい!

(1)投資信託の分配金に対する誤解

   投資信託の場合、投資家は運用会社にお金を貸しているのではなく単に手数料を払って運用を委託しているだけですから、出た利益や損失はすべて投資家のものです。リスクを負っているのは投資家です。したがって、投資信託の分配金の原資は投資家の資産です。つまり、分配金が支払われるかどうかは、自分のお金を引き出すかどうかということです。

(2)投信の基準価額は判断基準ではない

   投資信託には基準価額というものがあります。これは「投資信託の純資産総額を総口数で割った一口あたりの価額」です。投資信託というのはさまざまな株式や債券を組み入れて運用していますので、組み入れている証券の価格が上下するにつれ、基準価額は上下します。

(3)株式こそがリアルマネー

   株式というのは「活動することによって新たな付加価値を生み出す主体」である企業の価値を表象するもの。その出資証券である株式が広く世の中で売買されることで流通する。その価値について世界中の人に認識されています。これこそがリアルマネーと言えるのではないでしょうか。

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