重粒子線治療について
1、 要旨
私は前立腺ガン治療に重粒子線を採用した。その治療を千葉市にある病院で受けた。そこで経験したことや、医師等から聞いたことを以下に記します。これが、今後のガン治療対策の参考になれば幸いです。
2、重粒子線とは
放射線の一種です。放射線とはエックス線やガンマ線などの波長の短い電磁波の他に電子線・重粒子線などがあります。
放射線は直接DNAを傷つけるだけでなく、細胞内の酸素に働きかけて、いわば凶暴化させDNAを傷つける力を強くします。放射線は活発に活動して盛んに分裂する細胞ほど、たたくことができると言われています。
重粒子線とは、原子核を加速して得られる「粒子線」の総称で、加速する原子核によって中性子線・陽子線・炭素線・ネオン線などさまざまな種類があります。
3、重粒子線治療のメリット
(1)ある一定の深さのところで放射線の量が大きくなる、つまり高い線量域をつくる。
重粒子線治療では線量のピークをガンのある部位に合わせることで、周囲の正常な組 織にかかる負担を少なくすることが可能です。
(2)ガンの近くで線量が高くなり、しかも体を突き抜けることなく目標地点でピタリと止まります。線量ピークを生じた後はきわだって線量が低くなるため、その先への影響が少ない。
(3)ガンの大きさや位置に関わらず治療ができる。通常の放射線療法ではガンが大きくなると、広い範囲に放射線を照射しなければなりませんから、正常な組織が受ける影響も大きくなり、困難でした。重粒子線はガンだけにターゲットを絞り込むことが容易なので、ガンが大きくても治療を行うことができます。
(4)ガンの形を再現できる。ポーラス(ガンの形状に合わせて作った型)をあらかじめ作っておいて、重粒子線はその形となって、体の中に入っていくためガンの部分を正確に当てることができます。
(5)治療には炭素線が使われます。炭素線は以下の特徴があります。①エネルギー密度が高い ②とぎすまされた粒子 ③体にやさしい
(6)重粒子線治療は1992年頃に臨床が開始され、2002年頃に先進医療としてスタートした。 2012年3月までに7271人(先進医療4300人)が治療を受けた。
(7)放医研は重粒子照射室が5室あり、E室とF室が前立腺ガンを多く治療している。
100名程度が毎日治療できる能力がある。
4、重粒子線治療のデメリット(副作用)
(1)皮膚に軽い日焼けのような炎症がおこるケースがある。
(2)消化管は穴が開くことがあるので、適していない。
(3)放射線があった部分に炎症等の反応がでることがある。
(4)水分を多くとること。お酒は治療後2か月間飲まない方が良い。
(5)照射部位に刺激する乗り物(自転車)は乗らないこと。
(6)あまり刺激の多いものは食さないこと。
(7)サウナは治療後2か月間控えた方が良い。
5、治療準備
(1)かかっている病院の紹介状と検査データ(CT・MRIデータ)が必要。
(2)原則入院で体調管理する(最近は通院する人も多い)。重粒子線照射準備のため。
(3)血液検査・CT検査をし、その後に固定具を作成する。入院時当日に、X線と心電図をとる。
(4)重粒子線治療の2日目に314万円(一律)の請求書が届き、1週間以内に振り込む。
ガン保険を利用している患者も多くいる。
(5)現時点では前立腺ガン治療は12回の照射である。火曜~金曜を3回り。照射前に小便をして、その後40分経過後に治療(照射)開始する。
(6)食事は病院食だか、私には一般的(普通の味)に感じた。
(7)重粒子線以外(入院費等)は健康保険が適用される。
(8)前立腺ガンの場合は便を朝8時までにしないと、浣腸して出すことになる。基本は前日の夕食後か次の治療までに1回以上便が出れば良い。
(9)肺がんの初期は1回の照射で終わる。ただし、肺に通常の放射線治療を受けたことがある場合は十数回になる。
(10)肝臓ガンは2回照射が多いとのこと。
6、重粒子線治療の注意点
(1)毎日、排便・小便回数、食事摂取量、体温、薬の服用を記入する。
(2)普段飲んでいる薬を申告する。治療結果に不思議なデータが出てきたりするので。
(3)重粒子線治療にPSAが少し上がることが多い。(ホルモン注射をしている場合)
(4)前立腺ガンは重粒子線治療後にPSAが3程度以上になったら再発の可能性が出てくる。
(5)治療後に1回/3か月程度、通院する。他の病院で測定した場合はそのデータをもってくる。
7、その他
(1)風呂(シャワー付き)は2日に1回入れる。基本は一人ずつ入っている。同時に2人までは入れる大きさではあるが。
(2)入院患者が重病人の割には元気で過ごしている。雰囲気も比較的一般病院よりも明るく感じた。
(3)前立腺ガン患者に共通していたのが、尾てい骨部分が少し痛くなった経験を持っていた。
(4)入院室は4階と5階だけであり、それぞれ個室9室、4人室9室あるので90名程度が入院できる。
(5)4月と8月に重粒子線装置の定期整備を実施するので、その期間の治療ができない。治療は続けて行うのが原則になっているので、その間の入院患者もいなくなる。
(6)看護師も比較的親切であった。あまり、いやな思いはしなかった。
(7)ホルモン注射をするとオナラが大変良くでるようになる。その注射がきかなくなってもまだオナラがでる(少し減るが)。
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