地震の癖

1、要旨

 地震の発生メカニズムとして「プレート・テクトニクス(プレートが移動することにより地震が発生する)理論」が広く世界に知られています。しかし、その理論では説明できない場所で大きな地震(四川大地震等)が発生しています。新たな理論が待ち望まれている時に、角田史雄(埼玉大学名誉教授)が「熱移送説」を発表されました。その著書「地震の癖」(講談社+α新書)の内容を抜粋して以下に記します。

2、熱移送説

(1)熱移送説の主役は「プレートの移動」ではなく「熱エネルギーの伝達」です。その大本の熱エネルギーは地球の地殻からスーパープリューム(高温の熱の通り道)を通って地球の表層に運ばれ、表層を移動する先々で火山や地震の活動を起こす。

(2)火山の場合は熱エネルギーが伝わると熱のたまり場が高温化し、そこにある岩石が溶けてマグマ(約1000℃)と火山ガスが生まれる。そして高まったガス圧を主因として噴火が起こる。

(3)地震の場合は地下の岩層が熱で膨張して割れることにより発生する。熱エネルギー量が多い程、大きな破壊(地震)が発生する。大地の活断層は長い時間が経過すると、くっついてしまい大きな圧力をかけてもびくともしなくなります。しかし、普段は動けない古傷跡である活断層ですが、地下の高温で生き返ることがあります。

(4)スーパープリューム(巨大なきのこ状)は地球の中心から南太平洋(ニュージーランドからソロモン諸島にかけての海域)と東アフリカの2箇所へ出てきます。これは地球の中心から表層に向かう熱の流れの本流です。これ以外の無数の小さな支流は隙間を見つけて地球の中を上へと向かっている。日本の地震や火山の噴火に関係するのは、南太平洋から太平洋の周りを流れる本流です。

(5)南太平洋から出てきた熱エネルギーは西側に移動し、インドネシアに到達すると3つのルートに分かれて北上しますが、わずかながら東のアメリカ側へ流れるものもあります。3つのルートとは①インドネシアのスマトラ島から中国に繋がるルート。 ②インドネシアからフィリピンに向かい、台湾を経由して日本に流れるルート。 ③フィリピンからマリアナ諸島へ向かい、伊豆諸島を経由して伊豆方面と東北地方沿岸へ流れるルート。

(6)火山の噴火と地震の発生場所は同じ。約10億年前の地球大変動により、環太平洋地域は深く裂けた。そこからマグマが噴出し続けて火山をつくり、地震を頻繁に発生させる場所になった。熱エネルギーが通りやすく、溜まりやすい場所でもあり高温化する場所や岩盤の割れやすい箇所が10億年間もほとんど変わっていない。

(7)熱エネルギーは1年に約100Kmの速さで移動します。このため、インドネシアやフィリピンで地震や火山の噴火が起きた場合、その何年後に日本で地震や火山の噴火が起きるかが、ある程度予測できます。

(8)熱移送説の確立にはマントルトモグラフィ(核磁気共鳴装置)という技術が大きく貢献しています。

(9)地球の「殻」にあたる地殻という岩層ができて、それが切れたり曲げられたりする地殻変動は20億年前に始まったと言われている。その後数億年ごとに変動が起きている。そしてどの地殻変動の前に、必ずマグマの大噴火がある。

(10)日本列島の場合、約600万年前からマグマの活動が活発化して、割れ目から地表にあふれ出しています。それとともに、海だったところが陸に変わり、陸の面積が増え続けています。それが急加速したのが約70万年前で、それ以降日本列島の地面は上がり続けている。

(11)プレートの沈み込みの影響を調査するため、伊豆・箱根の真北にある足柄地域と丹沢地域を調査した。その結果南北方向の地層に皺しか見つからない。押した力は南の伊豆ではなく、東の東京方面からとしか考えられない。太平洋プレートどころか、陸での岩盤の押し合いとしか考えられない。

(12)VLBIという超長基線電波干渉法を用いて米国ハワイ地域と茨城県鹿島地域の距離を測定すると、毎年6cmずつ縮まっているのですがハワイ地域とアラスカ地域も同様に縮まっていることがわかった。つまりプレートが時計周りに回転している。

(13)マントルには対流が見られず、「アリの巣」のように熱い部分と冷たい部分が入り組んでいることがわかってきた。

(14)東日本は伊豆諸島に沿って北上するエネルギーの流れるルートはありますが、そこから南関東⇒東関東と日本海溝⇒東北太平洋岸に枝別れする。南関東⇒東関東ルートでは多摩川や埼玉・東京都県境から東へ順に飛び跳ねながら地震をおこす癖がある。伊豆諸島北部で火山が噴火すると、必ず1~2年後に首都圏南西部で地震がおこる癖がある。

(15)スマトラ島から中国に繋がるルートでは、黄河中流域での巨大地震が起こる前、スマトラ島での火山活動が活発化する癖がある。

(16)東アフリカからの熱移送ルートは、地中海⇒イタリア⇒トルコを経由してヒマラヤ山脈に行き着きます。2つのスーパープリュームからの熱移送はどちらもヒマラヤに辿り着き、地下700kmあたりで合流して地面を盛り上げることで、世界最高峰の山々の形成を後押ししたと考えられる。

(17)火山が噴火するときは、まず深いところで低周波地震が起きます。これは1000℃で溶けた岩石である熱いマグマが揺れ動くため。それから、地下15kmあたりで起きた地震群は次第に上昇していき、火口の近くで火山性群発地震が発生すると、すぐに噴火が起きます。


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