ジム・ロジャーズ
1、要旨
ジム・ロジャーズは冒険投資家である。世界中をオートバイや車で2周した経験を持ち、その冒険で知りえた情報で投資を続けている。大変興味ある人物なので、彼の著書「冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見」(日経ビジネス人文庫)から経歴や考え方を纏めてみた。
2、ジム・ロジャーズの経歴
(1)出身は米国アラバマ州デモポリス。現在はシンガポール在住。
(2)イエール大学(奨学金を利用)に入学し歴史を専攻しボート部に所属した。イエール大学に在学中にウォール街(アルバイト)で働いた。イエール大学を卒業し、イギリスのオックスフォード大学に入学する。オックスフォード大学ではボートレースに夢中になり、ヨーロッパ中(ソ連にも行った)を旅して歩いた。この時、一緒に旅した女性(ロイス)と最初の結婚を3年生の時にする。
(3)オックスフォード大学を卒業後に2年間の兵役義務につく。陸軍の補給部隊に所属。
(4)ドイツ系の投資会社「アーノルド・アンド・S・ブレイクロウダー」に就職した。この会社で働いている間にロイスと離婚し、その4年後に再婚したが、長く続かなかった。この会社で副社長をしていたジョージ・ソロスと仕事をすることになった。業界の規制ができ、やむなく会社をやめざるをえなくなった。
(5)ジョージ・ソロス(市場のタイミングを正しくとらえるセンスと鋭敏な取引感覚を持っている)と二人だけでクオンタム・ファンドという海外投資家向けオフショア・ヘッジファンドを始めた。このファンドは不景気の中で10年間に4200%の利益を出した。
(6)投資歴は取引を始めた最初は資金を数倍に増やしたが、その金を空売りにつぎ込んだが失敗し無一文になった。
(7)コロンビア大学で5学期間教えた。その後コロンビア大学の教授に就任したが、1年足らずで世界中をバイクで回る旅にでる。
(8)大学で教えている期間にCNBCの司会者などを引き受ける。
(9)1990年春にガールフレンド(タバサ)と1000CCBMWバイクで世界中を回る。アイルランドから出発し、22ケ月間16万km(ギネスブック)6大陸50ヶ国を訪問した。
(10)1999年1月1日から現在の奥様(ベイジ)と四駆の改造ベンツで世界1周の旅に出た。アイルランドを出発し、116ヶ国24万5000kmを走破(ギネスブック)した。
(11)2002年5月1日ベイジとニューヨークで結婚式をする。そして二人の女の子の父親になる。
(12)子供達の教育のため、2007年にシンガポールに移住した。
3、ジム・ロジャーズの考え方
(1)歴史や歴史がもたらした結果とは椅子に座って頭の中で考えたものを意味しない。実際にその場に行って冒険し体得したことである。
(2)力はアジアに移行している。金融危機の泥沼の中、世界はまさに金融そのものから離れようとしている。金融会社が富を生み出す時代が終わろうとしている。物品の生産者が活躍する時代がやってくる。
(3)今、世界中で農業に従事する人がいない。(米国60歳、日本68歳)
近年、世界では食品の需要が供給を上回っている。1980年代に35%あった在庫量が14%にまで落ち込んでいる。
(4)景気が良くても悪くても、紙幣を乱発するので必ず銀・米・エネルギーなどの実物財の価格が上がる。また、投資家が通貨価値の下落から身を守ろうとするので、その他の実物資産の価値も上がる。歴史を知れば自明のことである。
(5)人生でミスを犯すことを恐れてはいけない。お金を失くしてもいい。少なくとも1回、なるべくなら2回、破産するといい。できるだけ若いうちに。すべてを失う経験は有益だ。自分がどれほど無知だったかを思い知らされるから。
(6)一生涯の間にできる投資はわずか25回。あとは我慢強く待つのみ。
(7)米国の崩壊現象
①大学の「終身在職権」は最近生まれた制度。その資金を得るため、大学の授業料(住宅・食費含む)が56000$/年かかる。米国の破産法では学費のために借りたお金を帳消しにできない。大学は学生から集めたお金をファンドに運用を委託している。
②アメリカで最も成長を見せているのが訴訟である。弁護士数は他国の弁護士数の合計よりも多い。
③アメリカ人は国外で銀行口座を開けない法律ができた。
④税金制度が悪夢としか言いようがない。所得税・キャピタルゲイン税・配当税をはじめあらゆるところに税金をかしてくる。
(8)国の実情を知るには、国境を越えるとき賄賂を払うべきかどうか。すべては公明正大に行われているか、手続きは効率的か。公式の両替レートとブラックマーケットのレート差を比較する。
(9)アフリカではボツワナだけがブラックマーケットも賄賂もなく、すべてが効率良く進められていた。道路状態も良く信号も標識もきちんとしていた。
(10)BRICで成功した国は中国だけ。
ブラジルは一次商品の値上がり益を享受しているだけの国で、外国人の土地所有制限・為替管理・高い関税・保護貿易等で先行きは暗い。「ブラジルは神に選ばれた国、神が一番好きな国だけど、それをブラジル人に治めさせている点が問題」と言われている。
ロシアも一次商品の値上がり益を享受しているだけの国で、出生率が極めて低く高齢化が急速に進んでいる。ロシアを離れる人が増え、旧ソ連の国々ではロシア民族が疎まれながら暮らしている。平均寿命が短い。瓦解し続けている国。街を歩いていて、店の前に行列を見かけたらとにかく列に並ぶ。何かが店に入ったということで、品物が何であれ手に入れる必要がある。あなたのほしいものをもっている人と物々交換できるから。
インドは出生率が高すぎて問題解決できない。国民の食糧を賄えない。官僚制度は世界にも類を見ないほどで、腐敗した政府は慢性的な無能状態にある。当座しのぎの国境によって囲い込まれた多くの民族は異教徒の間で激しい対立をしている。
(11)金(ゴールド)は人間がもっている未開時代からの欲求で今後もゆるぎないもの。
(12)ユーロは加盟国の全てが帳簿をごまかしている。条約を守る国がなくなってしまった。システムが崩壊していく様を我々は見ることになる。
(13)ミャンマーはこれから急成長をするだろう。もうすでに何でも物があるようになった。アメリカは制裁していたので、出遅れてしまった。
(14)北朝鮮はどこに行っても「ひとつの朝鮮、二つの体制」というポスターが町中に貼ってあって、朝鮮半島の統一を望んでいる。統一されれば8000万人の国が誕生し、安い労働力と豊富な資本が合わさって日本にとっても脅威になるだろう。北朝鮮は観光・結婚がビジネスになる。
(15)中国人を筆頭にアジア人の観光がこれから大きなビジネスになる。
以上
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