新世界
1、要旨
西野亮廣著(KADOKAWA発行)の本を読んだ。とても新しい考え方がたくさん盛り込まれていて、感動した。以下に抜粋して記す。
2、内容
(1)貯信時代
芸人として売れあぐねていた「ホームレス小谷」は芸人を辞めてホームレスになってその生活をネット配信した。そして一日を50円で売って「何でも屋」をやった。それを半年ほど続けたある日、50円で買ってくれた女性と結婚することになった。結婚式の費用を集めるために、クラウドファンディングをしたところ250万円が集まった。この彼を支援してくれた人は「ホームレス小谷を50円で買ったことがある人達」だった。それは、彼が半年間貯め続けた「信用」がお金に換金された瞬間だった。
クラウドファンディングは「お金を集める装置」ではなく、「個人の信用をお金に換金する装置」だった。信用さえあれば、お金が作れるようになってきた。「信用持ち」は現代の錬金術師とも言える。信用を貯めた人間がメリットを受け取れる時代が幕を開けた。
古本には二種類ある。「最後まで綺麗に読まれた古本」と、読み手が気になった一文に線が引かれていたり、付箋が貼られていたり、隅っこにメモが書かれている「読み手のしるしが入った古本」だ。このうち「綺麗に最後まで読まれた古本」はブックオフで買い取ってもらえるけど、「読み手のしるしが入った古本」は取り扱ってもらえない。でも、イチロー選手が読んで、気になった一文に線を引いたり、隅っこにメモを書いた本って定価より高い値段で欲しい人がいる。「しるし書店」はそういった出品者の視点(しるし)が入った本だけが出品されている古本市場のこと。
信用を稼ぐ方法は「嘘をつかない」ということ。嘘は感情ではなくて、環境によって「つかされる」。嘘をつきたくなかったら。「嘘をつかざるをえない環境」に身を投じないことだ。
(2)オンラインサロン
オンラインサロンは「ファンクラブ」に似ているが、「サービスの流れ」や「お金の流れ」が一方通行とは限らない。ボクは実際に「サーカス!世界で一番楽しい学校」というイベントを開催している。このイベントではサロンメンバーが6000円を払って運営スタッフとなり、働いている。スタッフになれる権利を買った彼らは、美術セットを作ったり、照明を作ったり、「サーカス!」を作るまでの仕事に価値を見出した。
オンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」は国内最大で、メンバーは現在12000人。プロジェクトごとに集合と離散を繰り返している。オンラインサロンを利用して、個人がやりたい仕事だけを選べるようになると、「会社」の立ち位置は難しい。社員に利用されない会社は廃れる。これから生き残るのは「社員を使う会社」ではなくて、「社員に使われる会社」だ。
(3)新世界
お金に時間を乗せてプレゼントする。その方法として「文字」を使う。10文字の手紙を書くのと、1万文字を書くのとでは所要時間が変わる。文字数と所要時間はそこそこ比例する。この贈り物問題を解決する「レターポット」というサービスの話。
そのサービスのユーザーは全員「ポット」という名の財布を持っている。その財布に入れるのは「レター」という名の文字だ。「レター」は、運営が「1文字=5円」で販売している。「電報」をイメージしてもらうとわかりやすい。例えば、僕が1000文字(5000円分)を購入。そしてキミに1000文字の手紙を書いて、キミのポットに贈ったとする。キミはその文字が5000円分の価値だと知っている。ついでに、ボクがキミに1000文字分の時間を捧げたことも知っている。そんな中、来週はキミの友人の誕生日。その友人は物を要らないと言っている。キミはキミのポットに入っている「ボクから貰った1000文字」の中から、800文字を使って日頃の感謝の気持ちを手紙にして、友人に贈る。電報で贈ってもらった文字を再利用するイメージ。レターポットユーザーであるキミの友人は、キミから贈られてきた800文字が「4000円の価値」だということを知っている。そして、800文字分の時間を自分に捧げてくれたことを知る。その時点で友人への誕生日プレゼントは成立した。文字をお金に換金できない。「レターポット」には換金装置は要らない。レターポットを使ったことによって、本来ならキミの財布から出ていくハズだった「4000円」が出ていかなくて済んだ。その時点でキミは「4000円」を手に入れたことになる。
実際の話として、2018年7月に西日本に甚大な被害をもたらした「西日本豪雨」は、「レターポット」のユーザーから被災地に数十万文字の応援メッセージが贈られ、135万3620 円が「岡山県共同募金会平成30年豪雨災害義援金」に支援された。レターポットでは、有事の際は「公開ポット」と呼ばれる掲示板のようなものがサイトのトップページに現れる。そして、その「公開ポット」に応援メッセージを贈ると、被災地にお金を贈ることができる。
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