自然災害と工場などの災害事例から考える

最近特に自然災害が頻発しているので、メディアでも多くのコメンテータが述べているが、拙い例を用いながら今一度、読者の皆さんと考えてみたい。

日本国は21世紀に入り多くの自然災害により、国土や人々がダメージを受けている。

ここ数年は、地震と巨大台風が連発して一段と猛威を振るいながら日本の各地に広範囲に襲い掛かり、建物や家屋の倒壊、火災、浸水・破損、電柱の倒壊により多くの国民生活に甚大な影響を与え人々の描いていた人生を大きく180度変えてしまう。

この国に住む私たち、特に平穏な生活から遠ざけられた人々(仮設住宅などに長く住む人など)は、いつまた大きな自然災害が発生し遭遇してしまうのか?と常に脳裏には心配が付きまとい、心と体の両方に疲弊が蓄積している。

また今日のメディアによる報道もきめ細かく伝えることが多い現状を見ると、一昔前より災害に対するセンサーが敏感になっている日本人が増加しているのではないかと見受けられる。

このような自然災害には、地球上の人々がどんなに力を合わせても簡単に対抗できるものではない。

近年大きな勢力と想定外のルートで通過する台風を例に具体的に見てみる。

まず、台風が来る前に必ず正確でメッシュの細かい情報を早く入手し、自宅の弱い部分の補強(窓・屋根などの補強や応急処置)をおこない準備する。同時に停電した場合の予防として携帯電話の充電、自家用車のガソリンの給油、ラジオと懐中電灯の電池、食料、水などを数日分買いそろえておく。風呂には水道管の破損時にトイレ用として水をためておく。特に、2019年の今年の台風では、停電になると復旧までの日数が数週間にも及ぶことがあり、科学技術が発展して「私の家はオール家電よ!」と自慢しても、直撃されると「生活の不便」が一気に押し寄せてくるのだ。頭ではわかっていても現実に遭遇しないと真に実感できないのが人間の弱さである。しかし、最近では拡大被害が進んだため、いざという時のために蓄電池を購入する人も増えているという。

台風が自分の地域に迫り風雨が強くなった場合は、周囲の状況を見極め、万一床下浸水になり水かさが増えてきたら、床上浸水の恐れが強いので、2階に上がり状況を注視する(1階建ての人もいるが)。

しかし川沿い周辺の民家の人々は、集中豪雨による川の氾濫が頻発し下流や支流の周辺の民家の多くが濁流に飲み込まれ、命も家も吹き飛ばされて家族皆が悲劇のどん底になる。また、昔から発生している土砂災害も避けられない。建築主はその場所に家を建てるときに、ここまでの土砂崩れの危険性を自らが十分に予想していないからである。

自然災害はこのようにして、老若男女を問わず人々を不安に落とし込め、生活を元に戻すには長い年月がかかってしまい、これが今後も短い周期で続くから恐ろしいことなのである。

オーソドックスな方法だが筆者は日々、新聞や本、雑誌、TVなどから地球環境の問題や世界の動き等の情報を得ている。しかし、正しい情報を取り込み、これを活かす知識にするには、本当に自分で考える力を身につける以外にない。

簡単に情報を得られる時代だからこそ、必要な情報を得るには努力がいる。

この自然災害と対比する意味で工場災害の事例を見てみる。

実は著者は、企業で工事と製造管理をしていた時期があった。その中の災害事例について記憶を呼び戻して一緒に考えたい。

まず、私が若い時に、工事現場を管理していた時に火災のニアミスがあった。

原料サイロの上に原料投入用コンベヤがあり、このコンベヤの修理のため溶接機により溶接作業をしていた。脚部の溶接をしていたその時、サイロ天板が溶け小さなピンホールになり下の原料に火花が落ちてしまった。報告を受けその発熱状況の様子を見たが、「これは燃える可能性がある」と判断して、作業を即中止。直ぐに窒素ボンベを用意して、そのガスをサイロ内に封入して事なきを得た。万一火災になったらと思うと今でもヒヤリとする経験だ。

このヒヤリハットは、溶接作業者の技量も影響するが、サイロ天板に部分腐食があり、そこに熱応力が集中したことが主な原因であった。

二つ目は、製造管理のポジションにいたときに経験した工程のシステムエラー事故である。

工程を統合するシステムが暴走して、タンク設備の閉止バルブが強制作動により「開放」したため、タンク内の貯蔵液が流出する事故が発生した。

発見者から報告を受け、工場内の現場を見ると液が床に流出しており、「手動で止めること」を判断、動力盤の電源をOFFにして自動弁からの液の流出を止める処置を施した。

ネットワークシステムの基板がエラーになり、出力信号が暴走したために発生した事故であった。

この原因であるが、システムの安全寿命を軽視したことが主原因であろう。システムの信頼性と企業が投資するコストを天秤にかけた場合に、総合的な実行予枠の関係もあり最終判断として、「今問題がないのだから、もう少し大丈夫であろう・・」という考え方で現場や工務部門の考え方とは乖離して、決着してしまったことである。

ここで工場設備のリスクに対する安全性の考え方を自然災害から反映して教訓になることがある。

つまり

工場設備を管理して安全を担保するには、次の3ステップになろうかと考察している。

第一に、目に見える(例えば溶接作業による)災害リスクと目に見えない(例えば制御やシステム上の)災害リスクにはどのようなものがあるか、そして、その危害防止の考え方をもつということ。

第二に、設備のリスク評価と危害管理システムの構築をおこない、必要なら投資するための予算計画を立案する事。

第三には、設備システムの安全を最優先にした上位方針を徹底し、リスクマネジメントに加えること。これらの対応を疎かにした場合、企業の生産活動に大きく影響する可能性は高く、万一の生産停止による損失は計り知れない。

前述した台風の被害でも、毎年同じように発生して一定のルートでなく日本国土を通過することが事わかっているのなら、事前の予防措置をどこまで考え実行できるかが我々の命を守るための最も大きなポイントなのかと思う。

それは工場の生産設備の管理や工事の在り方でも基本的に同様な思考法である。

最後に、最近初めて知ったことだが、「タイタニック事故の真相」に関する外国製作の番組を見た。

筆者は映画が好きなので、タイタニックに関する映画を数本見ているが、その事故原因は、約3000人を乗せた豪華客船が前方の大きな氷山に激しくぶつかり、船体が大きく破損したことにより海水が船内に流れ込み沈没して、多数の人命が失われたことが描かれている。

実は救助された人は少なかったと思われるが、その中で、事故後の事故調査委員会がまとめた資料では不誠実な内容であったということが今回の研究で明らかにされたことで、大きく認識が変わった。

【番組の結論から考える】

1. 事故原因

(1次原因)

タイタニックの処女航海が始まった時点、つまり出航した日からタイタニックは燃えていたというショッキングな事故原因の結論。下部船室の中で事件は起きていたのである。

船内の下部にある石炭倉庫内で自然発火した石炭が、出向前から燃えていた事実をボイラー作業員が会社に報告したにもかかわらず、なぜ出向を出航延期しなかったのか?

生存したボイラー作業員ら関係者の証言をまとめた内容は以下の通り。

火災のまま出航を続けたため、下部船室の隔壁が火災で1000℃近い温度により溶け出し、強度不足を招いたこと。

(2次原因)

そして、全速力のまま氷山に衝突したことも、石炭室の石炭が航海ぎりぎりの保管量であったため、減速することはしなかったという。氷山に衝突後2時間過ぎて、海水が勢いよく船内に流れ込んだ時に隔壁自体が破られ、船体が大きく傾き、沈没してしまった。

会社経営者は、出航を遅らせることによる損害のみに目を向け、自社の利益のみ優先して隠蔽してしまった。

2. 現代でも同じことが起こりうる

会社の隠蔽体質は、トップの経営哲学がいかに重要かを今回のタイタニック事故の真相が教えてくれる。最近では日産問題を筆頭に、長年かけて築いた信用を一瞬にして崩壊する事件もある。自分の会社に進路を誤る経営方針が打ち出された際には、組織の一員として異を唱える勇気を持つことが大切でないのかと自戒するこの頃である。

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