失敗の構造を考えて事故防止に活かす
NHKテレビの「ミス・ジコチョー」という番組が始まり、「失敗学の権威」である畑村教授の演出が入っているので面白く拝見している。大学の工学部教授である主演の松雪泰子が事故調査委員会のメンバーの一員として加わり、当初、その原因を見誤り「私失敗しちゃった!」と言った後に、本気モードになり本当の要因につながるヒント(証拠)を探し出し、迷路から抜け出したのちに真の事故原因にたどり着く話である。
この番組の面白い場面を見ながら、以前の自分の仕事のことを思い出す。
大分前の話になるが畑村教授の著書を読み、「これは参考になる」と膝を叩いたものだった。自分自身、前の会社では工場の生産現場における実務をしていたので、製造品に問題があると、「失敗事例」を参考に脇に置きつつ対応策を考えたものだった。
生産設備におけるオペレーターの「ヒューマンエラー」は、小さなものを含めると、これでもかというくらい日常茶飯事に発生した時期があったので、顧客のクレームや工程内不適合の対応において、その原因調査、応急処置・恒久対策まで、苦しみながら経験を積み重ねて製品品質のレベルアップを図った。
自らの経験からしても、これらクレームなどは、主に「人や組織上の問題などが起因して失敗した結果」であることが多い。したがって、その都度、4Mにおける現場の失敗の構造を良く見極めたうえでの原因調査と正しい対策が必要になる。
製品クレームが発生すると、お客様サイドからは一刻も早く回答を求められる。
そこで、畑村教授の失敗学曰く、原因を「要因」と「カラクリ」に分けて、思考回路を働かせると「今回の原因」に到達するため、対策も含めた考え方がうまく整理できる。
私は「原因」というものは、複数の要因が折り重なって発生するため、従来から一つに絞り込むことは適切ではないと考えていた。現場では何が起こっているのか、作業者がどのように設備をオペレートとしていたのかが調査結果としてまとめられないと正しい報告はできない。現実には直ぐに報告を出せと言われるが不十分な検討結果では応急処置になってしまい、企業としてお客様に対して誠意ある回答ではない。企業体質(組織)が悪ければ、「真の原因」は覆い隠されたものになり、その結果、再発して雪ダルマになり、取り返しのつかない大きな事故(不良品による回収)を招きかねないのである。
昔より、食品会社を殺すには刃物はいらないといわれるくらい、些細な工程管理や原料の賞味期限管理のまずさ、設備の洗浄方法の不具合による微生物繁殖など不適合例を挙げればいとまがない。これら食品企業の生産に従事している人々は、神経を集中して日々失敗しない方法を工夫しながら働いているのである。
だからこそ、「いざ鎌倉」という場合には、冷静に現場で起こった事故原因について、その構造がどのようになっているのかをよく調査解明することが、類似した事故を防止することになり、各企業に課せられた使命なのであろう。
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